自己紹介:子育ての「ほんと?」を論文で調べています。

初公開 更新 文:論文好きな薬屋さん

はじめまして、論文好きな薬屋さんです。育児にまつわる疑問を科学論文で調べて、Hagumieの育児コラムで発信しています。

私も子育て真っ最中の親で、毎日手探りしながらなんとかやっています。家族は、夫婦と1歳の娘の3人です。夫婦ともに大学で医学・薬学を専攻していて、仕事でも日ごろから論文を読んでいますが、そんな私たちでも、育児の情報には戸惑うことばかりでした。


育児の情報は、なぜこんなに混乱しているのか

育児をしていると、いろいろなところから情報が飛んでくることに気づきます。SNS、育児書、ママ友・パパ友からのアドバイス、医師の言葉。それぞれが少しずつ違うことを言っていて、何を信じればいいかわからなくなる場面が何度もありました。

医療や科学の世界では、根拠に基づいて判断する「エビデンスベース」の考え方がすでに当たり前になっていますが、育児の世界では、今も噂や経験談が中心です。さらに気になったのが、「エビデンス」をうたいながら、その信頼性をきちんと確かめないまま発信されている情報が少なくないことでした。


「論文がある」と「信頼できる」は別の話

論文があれば正しい、というわけではありません。論文にも質の差があるからです。質の低い論文には、たとえばこんなものがあります。

参加者の数が極端に少ない研究
特定の集団にしか当てはまらない研究
同じ結果がほかの研究でくり返し確かめられていない研究
質の低い学術誌(いわゆるハゲタカジャーナル)に載った研究

Ioannidis, 2005, PLOS Medicine など

こうした研究を「論文で証明された」と紹介するのは、噂や経験談を広めるのと本質的には変わりません。研究のデザインを確認する、複数の研究をまとめて読む、根拠の強さを見極める。そうした読み方をしてはじめて、論文は育児に使えるものになると思っています。


一つの疑問から気づいたこと:おしゃぶりの話

よく覚えているのが、娘が生まれてまもないころ、おしゃぶりについて調べたときのことです。検索すると、「おしゃぶりはSIDS(乳幼児突然死症候群)を防ぐ」という研究がある一方で、「歯並びを悪くする」という研究も出てきました。使ったほうがいいという情報と、控えたほうがいいという情報が混ざっていて、親としてどうすればいいのか、まったくわかりませんでした。

そこでそれぞれの研究を読んでいくと、見えてきたことがあります。歯並びへの影響が問題になるのは、ある程度大きくなってからも長く使い続けた場合です。一方、SIDSのリスクが高いのは、月齢の低い時期です。つまり、この2つの研究結果は矛盾していませんでした。複数の研究をあわせて読むと、「月齢の低いうちは使って、ある程度の年齢になったらやめる」という考え方が自然と見えてきます。一つの論文だけを見ていたら、この答えにはたどり着けなかったと思います。(実際には、娘がおしゃぶりをあまり好きではなかったので、使ったのは生後3か月ごろまででした。くわしくは指しゃぶりの記事に書いています。)

研究の中身をかみくだき、信頼性を確かめ、複数の研究をまとめて見たうえで判断する。それが本来の「エビデンスをもとにする」ということだと思っています。ただ、これは専門的な読み方を知らないと難しいことでもあります。だからこそ、それを自分がやって、わかりやすく届けたいと思いました。


どんな記事を書くか

「これって本当?」と思った育児の疑問を、PubMedという医学・科学論文のデータベースで調べ、複数の研究を読んだうえで、わかりやすくまとめています。これまでに、たとえばこんなテーマを取り上げてきました。

これからも、早期英語教育は本当に効果があるのか、ネントレ(ねんねトレーニング)は愛着に影響するのか、ほめて育てると自己肯定感は上がるのか、といったテーマを調べていく予定です。

論文を読むこと自体が目的ではなく、「明日の育児に活かせるか」を考えながら書いています。とはいえ、論文のとおりにすべてやる必要があるとも思っていません。「論文ではこう書いてあったけど、子どもはなかなかそのとおりには動いてくれない」なんてことは、日常茶飯事ですよね。研究はあくまで、迷ったときのひとつの道しるべくらいに使うのがちょうどよくて、研究は研究、自分の子は自分の子です。

あまり肩ひじ張らずに、「へー、そうなんだ」くらいの気持ちで読んでいただけたらうれしいです。でも、調べることはしっかり調べて書いていますので、内容は信頼していただけたらと思います。


最後に一つお断りを

このコラムで紹介する内容は、特定の育児法をすすめたり、医療的なアドバイスをしたりするものではありません。お子さんの健康や発達で気になることがあるときは、かかりつけの医師などに相談してください。

「こんなテーマを調べてほしい」というリクエストも歓迎です。ページ下の「お問い合わせ・訂正の連絡」から、気軽に送ってください。


参考文献

Ioannidis, J. P. A. (2005). Why most published research findings are false. PLOS Medicine, 2(8), e124. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.0020124