「頭がいいね」とほめると、子どものやる気は下がるのか?

初公開 文:論文好きな薬屋さん

子どもが何かをやりとげて、得意そうにこちらを見る。思わず「すごいね!」「頭がいいね!」と声をかけてから、「頭がいいね」とほめるのはよくない、という話をどこかで読んだ気がして、この言い方でよかったのかな、と思ったことはないでしょうか。

ほめて育てよう、とはよく言われます。一方で、ほめ方を間違えると逆効果だ、とも聞きます。ほめたいのに、何と言えばいいのかで迷う。ほめ言葉をひとつ選ぶたびに考え込むのは、正直、疲れます。

この記事では、ほめ方の研究が実際に何を比べて、何がわかっていて、何がまだわかっていないのかを整理します。先に言っておくと、研究が比べていたのは「ほめるか、ほめないか」ではありませんでした。


まず結論

ほめ方の研究が比べていたのは、「何をほめるか」です。子ども自身(頭がいい、いい子、上手な子)をほめられた子は、そのあと失敗したときに、やり直そうとする気持ちが弱く、楽しめず、自分を低く評価し、結果をごまかすことが多くなりました。やり方や努力をほめられた子は、失敗のあとも続けやすかった、という結果です。これは5〜6歳の実験でも、10歳の実験でも見られました(論文①②)。

「信じられないくらいきれい!」とふくらませたほめや、子ども自身へのほめは、自信の低い子ほど逆効果でした(論文③)。1〜3歳のころ、家でやり方や努力をほめられる割合が高かった子は、7〜8歳で「力は伸ばせる」と考える傾向が強く、4年生の算数の成績ともつながっていました。ただしこれは観察研究で、子ども自身をほめる割合のほうは、あとの考え方と関係がありませんでした(論文④)。

一方で、10歳の実験をやり直して差が出なかった研究があり、この考え方全体の効果を集めた分析では、効果は小さいとされています(論文⑤)。日本の家庭でほめ方の違いを比べた研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。

だから、「ほめてはいけない」という話ではないと思います。ほめるなら、子どもそのものより、やったこと・やり方・がんばりに言葉を向けるほうが、研究の結果とは合っている、というところまでです。


そもそも、ほめ方には種類がある

研究では、ほめ方をおおまかに3つに分けています(図1)。子ども自身をほめる言い方(「頭がいいね」「いい子だね」「絵が上手な子だね」)、やり方や努力をほめる言い方(「最後までがんばったね」「いい方法を見つけたね」)、そして「信じられないくらいきれい!」のように、強める言葉でふくらませる言い方です。

図1。研究で使われる3つのほめ方の分け方を、親の吹き出しと、子どもに伝わると想定されるメッセージで示した説明の図。子ども自身をほめる(「頭がいいね」「いい子だね」→ できた=頭がいい証拠。では、できなかったら? 論文①②③④)、やり方や努力をほめる(「最後までがんばったね」「いい方法を見つけたね」→ できた=やり方と努力の結果。できなかったら、やり方を変えればいい。論文①②④)、ふくらませる(「信じられないくらいきれい!」→ 次も「信じられないくらい」でないと、いけない? 論文③)。
図1 ほめ方の種類と、子どもに伝わること。研究で使われる分け方と、研究が想定する子どもの受け取り方をまとめた説明の図。Hagumie作成。

「頭がいいね」が心配される理由は、こういう考え方です。成功したときに「頭がいいからできた」と言われ続けると、子どもは「成功=頭がいい証拠」と受け取ります。すると、失敗は「頭が悪い証拠」になります。失敗が自分の値打ちの問題になってしまうと、難しいことを避けたり、つまずいたときに崩れやすくなったりするのではないか。力は伸ばせると考えるか、決まっていると考えるか(研究では「マインドセット」と呼びます)が、ほめ方で変わるのではないか、という見立てです。

もう一つ、背景があります。ほめることで子どもの自信を育てよう、という考えは、欧米で強く信じられてきました。1990年代のアメリカの調査では、親の85%が、「よくできたときに頭のよさをほめるのは、子どもに『自分は頭がいい』と感じてもらうために必要だ」と考えていました(Mueller & Dweck 1998 で紹介)。子育ての本でも、「すばらしい!」「完璧!」のような強いほめ言葉をたくさんかけるようにすすめられ、自信の低い子ほど手厚くほめて支えよう、と考えられてきました(Brummelman ほか 2014)。ところが、そうしたほめ方が、かえって子どもを失敗に弱くしているのではないか、と考えた研究者たちがいました。この記事で紹介する研究は、どれもこの見立てを確かめようとしたものです。


論文①:5〜6歳でも、ほめ方で、間違えたあとの反応が変わった

まずは、幼い子でも違いが出るのかを確かめた研究です(Kamins & Dweck 1999、Developmental Psychology誌)。

幼稚園児64人(平均5歳6か月)を、くじで3つのグループに分けました。子どもは人形を自分に見立てて、「先生に出された課題をやって、ほめられる」場面を4回演じます。ほめ方だけがグループで違い、子ども自身をほめる(「とても誇りに思うよ」「いい子だね」「これが本当に得意なんだね」)、結果をほめる(「それが正しいやり方だ」)、やり方をほめる(「一生懸命やったんだね」「いい方法を見つけたね。ほかのやり方も思いつく?」)のどれかでした。

そのあと、積み木で家を作ったのに窓をつけ忘れた、というような、間違える場面を2つ演じます。そして、自分の作品の評価、自分自身の評価、気分、やり直そうとするかを聞きました。ほめられた直後は、3つのグループに差はありませんでした。ところが間違えたあと、子ども自身をほめられていたグループは、作品を低く評価し(5点満点で1.97、やり方をほめられたグループは3.48)、自分自身も低く評価し、やり直そうとする度合いも低くなりました(図2)。結果をほめられたグループは、その間でした。

Kamins & Dweck, 1999, Developmental Psychology
図2。Kamins & Dweck 1999 の研究2。5〜6歳の64人を、人形を使った場面でほめ方だけ変えて比べた。間違えたあとにやり直そうとした度合い(0〜2点)は、子ども自身をほめた群0.97、結果をほめた群1.16、やり方をほめた群1.53。自分の作品の評価(0〜5点)は1.97、3.25、3.48。ほめられた直後は3群に差がなかった。
図2 間違えたあとの反応。やり直そうとした度合い(0〜2点)と、自分の作品の評価(0〜5点)。Kamins & Dweck(1999)研究2の値からHagumie作成。

子ども自身をほめられていた子は、間違えたあとに「罰を受ける」「悲しい」「ちゃんとできなかった」と話し、やり方をほめられていた子は「窓を外してつけ直す」「分解してもう一度作る」と話した、と論文には書かれています。

ただ、この研究は人形を使った役割演技で、実際に失敗した場面ではありません。人数も64人と多くはありません。幼い子でも、ほめ方の言葉の違いを受け取っていそうだ、というところまでの研究だと思います。


論文②:一方で、10歳では、「頭がいいね」のあとの失敗で何が起きたか

ほめ方の研究で、いちばん知られているのがこの研究です(Mueller & Dweck 1998、Journal of Personality and Social Psychology誌)。6つの実験からなり、以後の研究も、反論も、ここから始まっています。

アメリカの小学5年生(9〜11歳)が対象で、確認できた実験の人数は128人、51人、88人、46人などです。子どもは図形のパズルを10問解き、実際の出来にかかわらず、全員が「解いた問題の8割以上が正解。とても高い点だね」と伝えられます。そのときに、くじで分けたグループごとに、「頭がいいんだね」と言われるか、「がんばったんだね」と言われるか、何も言われないかが違いました。次に、わざと難しい問題を解かせて、「かなり悪かった」と伝えます。その失敗のあとに、もっとやりたいか、楽しかったか、失敗の理由は何だと思うか、次はどんな課題を選ぶかを聞き、最後にもう一度、最初と同じ難しさの問題を解いてもらいました。

失敗のあと、「頭がいいね」と言われていた子は、「もっとやりたい」が6点満点で3.25、「楽しかった」が4.11でした。「がんばったね」と言われていた子は4.53と4.89で、何も言われなかった子はその間でした(研究1)。「もっとやりたい」の差は、同じ指標を測った4つの実験のうち3つで見られました(図3)。次の課題を選ぶときは、「頭がいいね」の子の67%が「間違えにくいが、学べることは少ない課題」を選び、「がんばったね」の子は8%でした(92%が「難しいが学べる課題」)。別の実験(研究3、88人)では、自分の点数を実際より高く書いた子が、「頭がいいね」の子では38%、「がんばったね」の子では13%、何も言われなかった子では14%でした(図4)。

Mueller & Dweck, 1998, Journal of Personality and Social Psychology
図3。Mueller & Dweck 1998 の4つの実験で、失敗のあとに「もっとやりたい」と答えた度合い(6点満点)を、1〜6の目盛りの上の点で示した。研究1(128人):頭がいいね3.25、がんばったね4.53、何も言わない4.30。研究3(88人):3.24、5.20、4.28。研究5(46人):3.44、4.62、4.56。研究6(48人):3.75、4.63、4.00(研究6の差は偶然で説明できる程度)。
図3 失敗のあと「もっとやりたい」(6点満点)。同じ指標を測った研究1・3・5・6を並べた。Mueller & Dweck(1998)表2の値からHagumie作成。
図4。Mueller & Dweck 1998。各グループの割合を100人のドットで示した。研究1(128人):次の課題に「よく見える課題」を選んだのは、頭がいいねと言われた子の67%、がんばったねと言われた子の8%。研究3(88人):自分の点数を実際より高く言ったのは、38%、13%、何も言わない群14%。
図4 ほめ方のあとに、子どもが選んだこと。各グループの割合を100人のドットで示した。Mueller & Dweck(1998)研究1と研究3の値からHagumie作成。

点数を高く書いた子の話は、子どもを責めるためのものではないと思います。「頭がいい」とほめられたあとに失敗すると、その点数は「自分の頭のよさの証拠」になってしまいます。だから、見せたくなくなる。そう考えると、自然な反応にも見えます。実際、別の実験では、「頭がいいね」と言われた子は、失敗の理由を「自分の能力が足りないから」と考えやすく、「頭のよさは生まれつき決まっている」という考えにも傾いていました。

一方で、この研究の限界も書いておきます。実験室で、1回の失敗場面の直後の反応を見た研究です。半年後、1年後にどうなったかは見ていません。アメリカの10歳の結果で、日本の子に同じことが起きるかもわかりません。


論文③:さらに、ふくらませたほめと、子ども自身へのほめは、自信の低い子ほど逆効果だった

次は、「すごい!」をふくらませる言い方を扱った研究です。オランダの研究チームが、ふくらませたほめと、子ども自身へのほめを、それぞれ確かめています(Brummelman ほか 2014、Psychological Science誌と Journal of Experimental Psychology: General誌)。

まず、大人はどんな子にふくらませたほめを使うのかを調べました。大人712人に、自信のある子とない子の短い説明を読ませ、その子の作品にほめ言葉を書いてもらうと、「信じられないくらい」「完璧に」のように強める言葉が入ったほめは、自信の低い子に対して33%、自信の高い子に対して18%でした(図5)。家庭で親114人と7〜11歳の子を観察しても、自信の低い子ほど、ふくらませたほめを受けていました。

では、ふくらませたほめを受けた子はどうなるのか。8〜12歳の240人が、ゴッホの絵を写し、架空の「画家」から手書きのメモをもらいます。メモは、くじで「信じられないくらいきれいな絵だね!」「きれいな絵だね!」「絵については何も書かない」のどれかです。そのあと、「難しい絵は間違えやすいけれど学べる。やさしい絵はその逆」と説明したうえで、次に描く絵を4組から選んでもらいました。自信の低い子は、ふくらませたほめのあとに難しい絵を選ぶ数が減り、自信の高い子は逆に増えました(図6)。子どもたちは、ふくらませたほめも、ふつうのほめと同じくらい「本心から」と受け取っていました。嘘だと見抜いたから、ではないということです。

もう一つの研究では、親357人が、自信の低い子には「いい子だね」型のほめを多く、「よくがんばったね」型のほめを少なく書くことがわかりました。そして313人の子(平均10.4歳)の実験で、子ども自身をほめられた子は、そのあと失敗したときに恥ずかしさを強く感じ、自信の低い子でとくに強くなりました。やり方をほめられた場合は、そうなりませんでした。

Brummelman et al., 2014, Psychological Science; Brummelman et al., 2014, Journal of Experimental Psychology: General
図5。Brummelman ほか 2014 の研究1。大人712人が架空の子どもにほめ言葉を書くと、強める言葉が入ったふくらませたほめは、自信の低い子に対して33%、自信の高い子に対して18%だった。
図5 大人が「ふくらませたほめ」を使った割合。Brummelman ほか(2014、Psychological Science)研究1の値からHagumie作成。
図6。Brummelman ほか 2014 の研究3。8〜12歳の240人が、架空の画家から「信じられないくらいきれいな絵だね!」というメモを受けたあと、難しい絵を何枚選ぶかを数えた。ふつうのほめと比べて、自信の低い子は選ぶ数が減り、自信の高い子は増えた。子どもはふくらませたほめも本心からと受け取っていた。説明のための図。
図6 同じ「ふくらませたほめ」を受けたあとに。Brummelman ほか(2014、Psychological Science)研究3の結果の向きを示した説明の図。Hagumie作成。

自信のなさそうな子ほど、大人は手厚くほめる。けれど、その手厚さが、その子を失敗に弱くしていたかもしれない。研究者たちはこれを「ほめのパラドックス」と呼んでいます。「信じられないくらい上手」と言われた子は、次も信じられないくらい上手でなければいけない、と受け取るのかもしれません。

この研究はオランダの8〜13歳が対象で、効果の大きさは中くらいから小さめです。どの子にも同じことが起きる、という結果ではなく、自信の低い子で逆効果が出た、という結果です。


論文④:家庭での1〜3歳のほめ方は、何年もあとにつながっていた?

ここまでの研究は、どれも実験室での1回の出来事でした。家でのふだんのほめ方は、何年もあとにつながっているのでしょうか。それを確かめようとしたのが、シカゴの53家族を追った研究です(Gunderson ほか 2013、Child Development誌、同 2018、Developmental Psychology誌)。

子どもが1歳2か月、2歳2か月、3歳2か月のときに、家でのふだんのやりとりを90分ずつ録画しました。親には、ほめ方を調べるとは伝えていません。録画の中の親のほめを、「やり方や努力をほめる」「子ども自身をほめる」「その他」に分けて数えました。子どもが7〜8歳になったとき、「頭のよさは努力で伸ばせると思うか」「難しい課題と、やさしい課題のどちらを選ぶか」を聞き、4年生のときに算数と読みの成績を測りました。

1〜3歳のころに、ほめの中で「やり方や努力をほめる」割合が高かった子ほど、7〜8歳で「力は伸ばせる」と考えていました(考え方の違いの11.9%を、ほめ方の割合で説明できました)。続報では、やり方へのほめは、この考え方を通して4年生の算数の成績とつながっていました(図7)。一方で、ほめ方と成績の直接のつながりは、偶然で説明できる程度でした。そして、「子ども自身をほめる」割合のほうは、あとの「力は決まっている」という考え方とは関係がありませんでした。

Gunderson et al., 2013, Child Development; Gunderson et al., 2018, Developmental Psychology
図7。Gunderson ほか 2013・2018。シカゴの53家族の観察研究を年表で示した。1・2・3歳のときに家で90分ずつ録画してほめ方を数え、7〜8歳で力は伸ばせると思うかを聞き、4年生(10歳)で算数の成績を測った。やり方や努力をほめられた割合と7〜8歳の考え方のつながりは0.30、その考え方と算数の成績のつながりは0.24。ほめ方と成績の直接のつながりは0.07で、偶然で説明できる程度。
図7 1〜3歳のほめ方を、4年生まで追った。Gunderson ほか(2013、2018)の手順と値をもとにした年表の図。Hagumie作成。

この研究には、1〜3歳への「やり方のほめ」が、実際にどんな言葉だったのかも書かれています。ほとんどは、「よくできてるね」「上手に投げたね」のような、子どもがしたことに向けた短い言葉でした。実験で使われるような「がんばったんだね」は、この年齢ではとてもまれで、研究者は数えた覚えがない、と書いています。

親のほめの3分の2は、「いいね!」「わあ!」のように、何をほめたかを言わない言葉でした。また、親ごとのほめ方の癖は、1歳2か月のころにはもうでき始めていて、その後2年ほど、あまり変わりませんでした。

この研究で、私がいちばん大事だと思ったのは、子ども自身へのほめの結果です。「頭がいいね」型のほめが多い家の子が、あとで「力は決まっている」と考えるようになっていた、という結果ではありませんでした。効いていたのは、やり方や努力をほめることのほうでした。「頭がいいね」を減らすことより、したことをほめる言葉を足すことに意味がありそうだ、と読めます。

ただし、これは観察研究です。くじで分けた実験ではないので、やり方をほめる親は、ほかの面でも子どもへの関わり方が違っていて、そちらが効いた可能性を分けられません。著者も、それを限界として書いています。53家族という人数も多くはありません。


論文⑤:ただし、やり直した実験では差が出なかった

ここまでの研究だけ読むと、ほめ方で子どもが大きく変わるように見えます。ところが、論文②の実験をなぞってやり直した研究では、差が出ませんでした(Li & Bates 2019、Journal of Experimental Psychology: General誌。この記事では査読前の原稿で内容を確かめました)。

中国・ハルビンの小学生190人(平均10.5歳)で、論文②の研究1と同じ手順を行いました。パズルで成功したあとに「頭がいいね」か「がんばったね」と言われ、難しい問題で失敗したあとに、もう一度問題を解きます。年齢や性別、最初の成績を考えに入れると、失敗のあとの成績は、ほめ方で意味のある差がありませんでした。楽しさ、もっとやりたいか、自分の出来の評価にも、差はありませんでした。同じチームが続けて行った2つの実験でも、「力は伸ばせる」と伝える働きかけに、予想された向きの効果はほぼ見られませんでした(3つの実験を合わせて624人)。

Li & Bates, 2019, Journal of Experimental Psychology: General

同じころ、「力は伸ばせると考えるかどうか」が成績とどれだけ関係するのかを、研究をまとめて調べた分析も出ています(Sisk ほか 2018、Psychological Science誌)。

273件の研究(36万5千人)をまとめると、「力は伸ばせる」という考え方と成績の相関は0.10で、とても弱いものでした。「力は伸ばせる」と教える取り組みの効果を43件の研究(5万7千人)でまとめると、成績への効果の大きさは0.08でした。教育の取り組みの平均的な効果として引用されている0.57と比べると、ずっと小さい値です(図8)。ただし、経済的に厳しい家庭の子や、成績が危うい子には効く可能性がある、ともしています。

Sisk et al., 2018, Psychological Science
図8。Sisk ほか 2018 のメタ分析。効果の大きさ d を0〜0.8のものさしの上に示した。マインドセットを変える取り組みの成績への効果は0.08(43件、57,155人)。Sisk らが引用する教育の取り組みの平均は0.57(Hattie ほか 1996)。0.2・0.5・0.8が小さい・中くらい・大きいの目安。
図8 「力は伸ばせる」と教える取り組みの効果の大きさ。Sisk ほか(2018)の値からHagumie作成。

この分析は「ほめ方」そのものではなく、その背景にある考え方の効果を調べたものです。それでも、ほめ方の効果を考えるときの目安にはなります。ほめ方で子どもの人生が決まる、という大きさの話ではなさそうです。元の研究者たちからの反論もあり、議論は続いています。


研究をまとめて考えると

表1 この記事で紹介した研究
論文対象と比べ方わかったこと
①1999年。5〜6歳64人。人形を使った場面で、ほめ方をくじで分けた子ども自身をほめた子は、間違えたあとに自分を低く評価し、やり直そうとしなかった
②1998年。10歳。6つの実験(128人、88人ほか)。ひと言だけくじで変えた「頭がいいね」の子は、失敗のあとに粘りと楽しさが下がり、よく見える課題を選び、点数を高く言った
③2014年。8〜13歳。大人712人・親114人・子240人・子313人(オランダ)自信の低い子は、ふくらませたほめと子ども自身へのほめで、挑戦が減り、失敗のあとに恥を感じた
④2013・2018年。1〜3歳の家での録画を、4年生まで追った53家族(観察研究)やり方をほめる割合が高いほど「力は伸ばせる」と考え、算数の成績とつながった。子ども自身へのほめは、あとの考え方と無関係
⑤2019・2018年。10歳190人で②をやり直し(中国)。43件5万7千人のまとめ差は出なかった。「力は伸ばせる」と教える効果は0.08と小さい
図9。この記事で紹介した研究を、子どもの年齢(0〜13歳)と研究の種類で並べた地図。くじで分けた実験:①5〜6歳、②9〜11歳、③8〜12歳。家庭での観察:④1〜3歳の録画から10歳まで、③7〜11歳の親子観察。やり直しとまとめ:⑤9〜13歳の再現実験と43件のメタ分析。日本の家庭でほめ方の種類を比べた研究は見当たらない。
図9 この記事の研究の地図。紹介した研究を、子どもの年齢と研究の種類で並べた説明の図。Hagumie作成。

5つの研究を並べると(図9)、方向はそろっています。子ども自身をほめる言い方は、失敗のあとに弱さが出やすく、やり方や努力をほめる言い方は、失敗のあとも続けやすい。5〜6歳でも、10歳でも、家での1〜3歳の録画でも、同じ向きでした。

一方で、効果の大きさは、最初に言われたほどではなさそうです。実験で見ているのは、1回の失敗場面の直後の反応です。長い目で見た研究は53家族の観察研究だけで、実験をやり直して差が出なかった研究もあります。研究はアメリカ、オランダ、中国のもので、日本の家庭でほめ方の違いを比べた研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。

ほめの研究を広く見直した総説(Henderlong & Lepper 2002)は、ほめが意欲を支えるのは、本心からだと受け取られ、本人が変えられること(努力ややり方)に結びつき、ほかの子との比較に頼らず、届く目標を伝えるときだ、とまとめています。年齢や文化でも変わる、とも書いています。この記事の研究は、その一部を確かめたものだと言えそうです。


日常でできること:研究から考えるほめ方

研究の結果を日常に持ち込むなら、「ほめる量を減らす」ではなく、「言葉の向きを変える」なのだと思います。

  • 「頭がいいね」を、やったことに言い換える。 「最後まで考えたね」「何回もやり直したね」「この色、よく選んだね」。子どもそのものではなく、その子がしたことに言葉を向けます。小さい子なら、「上手に投げたね」「上手に積めたね」のように、ほめ言葉にしたことを一言添えるだけでも、論文④の分け方では「やり方のほめ」になります。

  • 「すごいね!」はやめなくていい。 思わず出た「すごいね」のあとに、何がすごかったかを足すだけで、やり方へのほめになります。「すごいね、自分で最後までやったね」。

  • ふくらませない。 「信じられないくらい上手!」より、「ここが前よりできるようになったね」。研究では、ふくらませたほめが逆効果だったのは自信の低い子でした。自信がなさそうなときほど、強める言葉は控えめにするほうが、研究の結果とは合っています。

  • 失敗したときこそ、やり方の話をする。 「どこが難しかった?」「次はどうする?」。論文①で、やり方をほめられていた子は、間違えたあとにやり直す案を自分で出していました。

  • 思い詰めない。 ほめ方を変えても、反応は子どもの性格や年齢で違います。研究で見えた差は、大きくはありません。うまくいかない日があっても、ほめ方のせいだと考えなくていいと思います。


我が家では

娘はまだ1歳なので、この記事の研究の多くは、我が家には少し先の話です。ただ、論文④が録画していたのは、ちょうど今の娘くらいの時期の、家でのふだんの声かけでした。

我が家では、娘が何かできると、夫も私も「すごーい!」「天才!」と言って拍手をします。すると娘も、一緒に拍手をします。論文④の分け方に当てはめると、「すごーい!」は何をほめたかを言わない「その他」のほめで、「天才!」は子ども自身へのほめに近いのだと思います。論文④では、1〜3歳のころの子ども自身へのほめは、あとの考え方と関係がなく、つながっていたのは「やり方のほめ」の割合のほうでした。

そこで、「すごーい!」も「天才!」もそのままに、そのあとに、たとえば「上手に積めたね」のように、娘がしたことを一言足してみようと思っています。ほめ方を気にしすぎず、たくさんほめたいとも思っているので、一言足すくらいが、我が家にはちょうどいいのかもしれません。


まとめ:科学的に言えること、まだ言えないこと

言えること:ほめ方の種類によって、失敗のあとの反応が変わる傾向があります。子ども自身をほめる言い方のあとは、失敗したときに自分を低く評価し、やり直そうとしにくく、やり方や努力をほめる言い方のあとは、続けやすい。5〜6歳と10歳の実験で確かめられ、1〜3歳の家でのほめ方が、7〜8歳の考え方や4年生の成績とつながっていた観察もあります。ふくらませたほめは、自信の低い子で逆効果でした。

まだ言えないこと:効果の大きさです。やり直した実験では差が出ず、関連する考え方の効果をまとめた分析でも、効果は小さいとされています。長い目で見た影響は観察研究が1つあるだけで、日本の家庭での結果もわかっていません。「頭がいいね」そのものがどれだけ害になるのかも、はっきりしません。家での観察では、子ども自身へのほめは、あとの考え方と関係がありませんでした。

だから私は、ほめない方向に行くのではなく、ほめる言葉の向きを少し変える、くらいの付き合い方でいいのだと思っています。


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